対談/vol.18

しょくスポ対談

vol.18 ダニエラ オージックさん

ダニエラさんお手製のチョコレートケーキを口にしたとき、「こんなにおいしいケーキ食べたことない!」と
感銘を受けました。
すごく生き方や考え方がシンプルな部分もダニエラさんの魅力。きっと余分なものを身につけないで勝負できるのはご自分に正直であり芯をお持ちだからだと思います。
また、マラソンやゴルフ、書道や華道などご趣味も多岐に渡るのですが、極めてらっしゃる点が本当に素晴しいです
祖父母から受け継いだ南イタリアの伝統料理やイタリアの魅力を惜しみもなく伝えてくださるダニエラさん。
尊敬する女性の一人です。とっても元気になれる対談記事ですので、ぜひ皆さまご覧ください。

Daniela Ozik(ダニエラ オージック)


南イタリアのポテンツァ生まれ。イタリアのバリ大学、ナポリ大学卒業後の1974年神戸大学大学院に留学、エコノミストとして
活躍する。
現在は昭和音楽大学と藤原歌劇団でイタリア語を教える傍ら、
南イタリア食文化の継承者としてイタリア家庭料理の普及に努めている。
また、日本の伝統文化にも造詣が深く、華道小原流の師範、書道でも多数の賞を受賞。各方面でその才能を発揮している。

 
※プロフィールは対談公開時(20115月9日)のものとなります 

イタリア語講師と料理研究家

―現在はどのようなお仕事をされていますか?
今は2つの仕事をしています。
一つはイタリア語の講師です。大学で教えたり、歌手や劇団員に
オペラのためのセリフや発音を教えています。
もう一つは料理研究家です。料理をつくることは私のパッションでもあり、本当に好きなことなんです。私の口の中にはラボがあるんですよ(笑)。 
-「口の中にラボ!」ダニエラさんらしい素敵な表現ですね。
ところで来日されたきっかけは?
イタリアではバリ大学とナポリ大学で経済を学んでいました。
卒業後、経済の研究をするために来日し、神戸大学大学院博士号を取得しました

 ▲ダニエラさんお手製のパスタ
留学時の選択肢には、ハーバード大学や南アフリカの大学などもありましたが、2年間の奨学金が出ること、私はチャレンジが好きな人間なのでイタリアから一番遠い日本を選びました。
―最初は経済がご専門だったのですね。それがなぜ、イタリア語講師と料理研究家に
転身されたのですか?
そうですね、エコノミストとしても充実していました。夜遅くまで仕事をしたり、イタリアへの出張も数多くこなしていたのですが、当時はすでに私には子どもが二人いたんです。子どもは自分達のママを奪ってしまう私の仕事が大嫌いで、娘に「えっまた行っちゃうの?学校から帰ってくるとお家は空っぽ!」と言われてしまいました。今でも、思い出すと涙が出てきてしまいますね。そんな子どもの言葉もあり、仕事よりも子どもといる時間を大切にするためにエコノミストとしての仕事は辞めました。
そして当時から料理は得意で日常的に作っていたのですが、友人から「料理を教えて欲しい」と言われたのが
きっかけで、料理研究家の道がスタートしました。
―第一線で活躍なさっていた方は、他の分野でも力を発揮されるのですね。本当に素晴しいです。
ダニエラさんはメディアにもたくさん出演されていましたよね。
そうですね。NHKの「今日の料理」にも出演していましたが、出演するきっかけは番組のプロデュ-サーが友人の
友人だったんですよ。ベストセラーになった「南イタリアの家庭料理(保健同人社)」は、糖尿病の専門医である横山先生の奥様が私の料理教室の生徒で、教えた料理を家庭でふるまったところ、「この料理は糖尿病の人にとてもいい!」と横山先生に認めていただいたのがきっかけとなり出版に至りました。この本を出版した後からテレビや雑誌書籍出版とどんどん広がっていきましたね。

家庭で学んだ本物をそのまま伝える

―日本の料理研究家は、料理の学校に通ったり、料理研究家について修行するのが一般的なのですが、ダニエラさんは南イタリア料理をどのように学ばれたのですか?
私は家庭が学校でした。ママとマーケットに行って魚屋さんや八百屋さんと話したりして、食文化を小さい時から自然に学んでいましたね。特に影響を受けたのは祖父と叔母です。
自然と学んでいるので画家が絵を描くように材料を見て、すぐにレシピが思いつきます。大さじ1とか100gとかではなくて、バランスはすでに頭の中でできているんですよ。
学校では私が知っていることは学べないんじゃないかしら。
―日本に伝えたいイタリアの食文化はありますか?
南イタリアの料理は体にいいし、バランスもいいと信じています。
だから「南イタリア料理のそのままを日本に伝えたい」と思っています。日本でイタリア料理を広めた方達の多くは、日本人の嗜好に合わせたイタリア料理を紹介していました。
私はそれをしたくありませんでしたので、イタリア料理には絶対に
“しょうゆ”は入れません。

南イタリアの料理の本を出版する時も、出版者に「日本人のために
(日本人に合わせた形で)書いてください」と言われましたが、「私は絶対に日本人のためにアレンジはしません、それをするならば本は出版しません。」と言い切りました。
その思いを貫き、出版した「南イタリアの家庭料理(保健同人社)」はベストセラーになったんですよ。

▲絶品!チョコレートケーキ
―現地の食文化のありのままを伝えたから、読者が感銘を受けたんですね。
そうですね。私の料理と日本の伝統的な料理は似ています。例えば素材の良さを引き立てる所です。
だから、南イタリア料理は材料がダメだったら、何もできないんです。
―私も以前、ダニエラさんの手料理のリゾットやアクアパッツァ、チョコレートケーキをいただきましたが、
すごく美味しかったです。
そう言ってもらえてよかった、ありがとう。
―お話を伺って『南イタリア料理』と『ダニエラさんの生き方』は同じ、つまり「素材・本質が大切」だというのがよくわかります。
そう、「素のまま」。わかってくれてありがとう。

イタリアから功績を認められて

―今までお仕事されてきて、一番嬉しかった事は何ですか?
数年前に祖国のイタリアから、『日本にイタリアの食文化を伝えた功績』を
認められて表彰されたことです。
―イタリアでも日本でも高い評価を受けていらっしゃいますが、
プロフェッショナルでいるために、心がけていることはございますか?
“興味”と“パッション”を大切にするようにしています。
例えば本を出版する時、24時間仕事していても疲れませんでした。
興味がある事なのでいくらでも続けられるんです。逆に終わった後はアドレナリンが出ていて、なかなか寝つけませんでした(笑)。
私には“大変”という言葉はありません!
興味と愛情があれば、料理でも書道でも華道でも…何でもできると思います。
―ダニエラさんは本当にいろいろなことをおやりになっていますが、
やりたくないと思った事はないんですか? 

▲教え子のハワイコンサートでは
二カ国語を駆使して司会
嘘はつきたくないですね。人間は嘘をついたら自分の人生が終わりです。
そうですね。特に自分自身に嘘をつくことが嫌ですよね。
その通りです。
―嘘をつくためにはマイナスのエネルギーをとても使うと思うんです。ダニエラさんはそういう事を決してなさらないから、ハードな仕事をしても疲れないんですね。ダニエラさんの生き方は本当にシンプルですね。
好きなこと、興味があることに集中して力を注いでいらっしゃるところがとても魅力です。

私たちの体は食べたもので出来ている

―様々なことに興味関心を持ち実行するためにはダニエラさん自身が健康であることが大切だと思うのですが、健康でいるために気をつけていらっしゃる事はありますか?
運動をすること。スポーツは小さい頃から大好きで、どんなスポーツでもやりましたね。最近はマラソン。この間、某国のマラソン大会に出ましたよ。でも30kmで棄権してしまったんです…。原因は現地の排気ガス。
すごく空気が悪かったため途中で嘔吐してしまったんです。その様子をみた友人からは「ダニエラはオーガニックの体だね」といわれました。
―私もそう思います。食事で気をつけていることはありますか?
人間の体は食べる材料から出来ているんです!だから食事は
シンプルでいいんです。

何にもない時は、インスタント食品ではなくて、パンを食べればいいと思います。市販品のパンにはショートニングなどが入っていますが、パンの材料は小麦粉と塩といったシンプルなものでいいと思うんです。私は自分で作っていますよ。
また、料理教室で生徒によく言っているのですが、「材料の魚や肉は2度殺さないでね!」と。つまり、動物は食材にするために一度殺しています。その食材で悪い料理を作ると魚や肉は2度も殺されてしまうでしょ(笑)。だからシンプルに美味しく作って欲しい。
―なるほど、その通りですね。鮮度の良い食材をシンプルに調理して美味しく食べる。過剰な味付けはそのバランスを崩すということですね。
そう。そして私は時間がないからといって、食事を簡単に済ますということがわかりません。時間がなければスケジュールを作って時間を作ればよいと思うんです。だって、私たちの体はすべて自分が食べた物で出来ているわけで、食事は自分のためなんですから。
―そうですね。
ところで、女性の方が男性より長生きなのはなぜだか
知っていますか?女性は食べたい物を作って食べているからです。
男性は作ってもらう事が多いので自分の食べたい物ではなく、食卓に出てきたものを食べます。女性はスーパーに行って目でみて、食べたいものを買い作って食べる事が満足になります。これが精神的なストレスにならないのです。また、季節の恵のものをしっかり食べていれば体にもいいし経済的にもいいですから。
―なるほど、おっしゃる通りですね。先ほど、マラソンの話が出ましたが今も続けてらっしゃいますか? 
日曜日は15~20km走っています。走るの大好きです!朝起きたらすぐに天気予報をみるの。あっ今日は天気がいいから走る事ができるわ!って。

▲食事はシンプルがいい!

▲2010年3月出場のローママラソンは
見事、完走!

▲1960年ローマオリンピックで聖火ランナーを務めたお兄様とその50年後(2010年)のローママラソン大会を完走したダニエラさんのツーショット。
お兄様は当時の聖火を手に、ダニエラさんのメダルにはアベベ選手が模られている。
―継続してらっしゃるところがすごいですね。走るときは音楽を聴いてますか?2010年3月出場のローマ
マラソンは見事、完走!
好きな音楽を聞いています。でも、自分の足音だけを聴いたり、自分の鼓動(心臓の音)を聴きながら走ることもあります。これがすごく気持ちいいんですよ!           
それと外で走るのが好きですね。
いい天気だったら二子玉川ではとてもきれい空が見えるし、富士山も見えるんです。東京でもマラソンはできるからいいですね。  
―まさに「Simple is the best!」ですね。

興味が尽きない生活

―最後に、ダニエラさんの今後の目標を教えてください。
マラソンは90歳までやりますよ(笑)!
今の健康な体がなければ仕事も、走る事も、遊ぶ事も何も出来ないので、目標は自分の体を守ることですね。それが自分の興味を見つける源泉になってますね。
―マラソン以外にも華道や書道も長く続けてらっしゃいますが、続けるコツはなんですか?
好きなこと。好きだから続けられるんだと思います。
―「好きこそ物の上手なれ」ですね。それにしても華道の師範や書道で「外務大臣賞」を受賞されるなんて素晴しいですね!!
ありがとう。  
―そうそう、ダニエラさんは最先端のメカにも強いですよね。
私は新しいものが大好き!次々興味に追いかけられているんです(笑)。友人に「次は何をやるの?」と
よく言われます。次々と新しい事をやっているので
「いつストップするの?」とも言われますね。でも興味が尽きないのでストップできません(笑)。
先日、エコカーのプリウスも買いました。これは環境を守らないと自分の体を守れないからです。いろいろな事に興味を持ちますが、すべて「自分の健康を守る」というのが原点ですね。だからシンプルになるのかもしれません。  

▲第39回 国際書道連盟展にて「外務大臣賞」を受賞
―『Simple is Best !』のお考えがダニエラさんの生き方すべてに繋がっていると実感しました!
本日はとてもステキなお話をありがとうございました。

編集後記

いろいろなことに挑戦されてらっしゃるダニエラさんにその秘訣を伺うと『①興味がある事はパッション持って続ける、②余分なことは考えずにシンプルに取組む』とおっしゃっていました。
端的なメッセージをしっかり受け止め、実践していきたいと思います。なかなかイタリア語が上達しない私
ですが、また素敵な人生のお話をお聴かせくださいね。日本語とイタリア語で(笑)?!                                                                ☆こばた てるみ☆
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