対談/vol.19

しょくスポ対談

vol.19 田嶋 雅美さん

誰もが知っているツタヤ、無印良品、吉野家などの大手企業のコンサル業務からベンチャー企業の支援、
さらには飲食店やマッサージ店(癒し空間)の経営までもおこなっている田嶋さん。
分け隔てなく誰に対しても誠実に情熱を持ってお話される点や、瞬時に的確な判断を下すところ、ブレナイ芯を
お持ちであることなどから、多くの方々の信頼を得てらっしゃるのでしょう。
今回初めて、プライベートなお話やこれまでのご経歴をゆっくりお伺いしたのですが、その中には、光り輝く言葉が
いっぱい詰まっていました。皆さま、ぜひご覧くださいね!

田嶋 雅美(たじま まさみ)


1996年、フランチャイズ本部専門のコンサルティング会社
(株)フランチャイズアドバンテージを設立。小売・外食・サービス
など多数のFC本部のチェーンシステム構築をサポート。 近年は、チェーンオペレーションを中心とした業務改善コンサルティングで
「無印良品」「ドラッグイレブン」「カメラのキタムラ(スタジオマリオ)」などの利益改善に貢献。その他、現場発想で安価に導入できる
チェーンマネージメントのためのポータルサイトや少数精鋭による
店舗運営を実現させるワークスケジュールの開発、「吉野家」
「ブックオフ」「三菱商事」らとともにFCベンチャーに特化した
IPOファンドの運営も行なっている。また2006年から店舗事業を
スタート、「玄品ふぐ」の他、カジュアルイタリアン「ラ・ベルデ」
ハワイアンカフェ「アロハテーブル」とリラクゼーションサロン
「和風癒処」の加盟店として店舗経営を行っている。

株式会社フランチャイズアドバンテージ 代表取締役
聖徳大学 現代ビジネス学科 客員教授
経済産業省 中小企業庁 創業・ベンチャー国民フォーラム 幹事
「サービス工学推進委員会」委員(2011年度)
「サービス産業生産性革新委員会」委員(2010年度)


(株)フランチャイズアドバンテージ HP
※プロフィールは対談公開時(20118月26日)のものとなります 

9歳で起業、自分の信念を見つける

― 田嶋さんの現在のお仕事とご経歴を教えてください。
わが社は、店舗のチェーンビジネスのコンサルティングをしています。取り引き先は無印良品・ローソン・ツタヤ
吉野家など大手企業からベンチャー企業まで幅広いですね。
そもそも私が起業したのは、小学校3年生の9歳の時なんです。 
― えっ9歳ですか?すごいですね!何がきっかけで起業されたのですか?
それは、父の死がきっかけでしたね。

― お父様が亡くなられたのがきっかけなんですね、起業するまでの経緯を教えていただけますか?


父・母、姉・私と15歳下の妹の5人家族で、裕福な家庭でした。
その時から、「しっかりお手伝いしなさい、バスでは座ってはいけません。」などと礼儀や大切な事はすべて教育してもらいました。特に母は季節感や伝統文化を大事にする人でした。それが今でも「食」の仕事につながっているので、よい環境で育ったと思います。

私は小さい頃から好奇心旺盛で『なぜなぜ娘』でした(笑)。母は、そんな私の疑問になんでも答えてくれてたんです。今でも、いろんな好奇心をもってチャレンジできるのは母のおかげだと思いますね。
― いいご家庭で育ったんですね。
そうですね。でも、何が起こるかわからないのが世の中で、9歳の時に建設業の父が亡くなりました。そのため病弱な専業主婦だった母が父の跡を継ぐことになったんです。
その頃、子どもながらに自分たちの学費ぐらいは自分で稼ごうと思いました。だけど、最初の雑貨屋でのアルバイトは“子ども”というだけでアルバイト料がとても安かったんです。
これでは、学費も稼げないと思い、自分で考えて、建設業としてフリーで働いている人のために電話の取次ぎを始めました。“黒電話”の時代ですね…当時、1日1万円は稼ぐようになっていました。
― すごいですね。そのときからずっとお仕事をされてきて、続けていられる秘訣はなんですか?
そうですねぇ、秘訣というか9歳の頃から変わらない志があることですかね。
裕福な家庭の頃は「活発なお嬢さんね」といわれていた態度が、母子家庭になってからは「お父さんがいないから行儀が悪いのね」と同じ行動も環境が違うだけで反応がガラリと変わってしまったんです。
それはおかしいんじゃないか!と子どもながらに思いました。
この経験から私は『正しい事は正しい!間違っている事は間違っている!と見極め、正しいことは正しいといえる世の中にしたい。』と強く思うようになりました。
今でも、『本質を見極める世の中で、人を育てたい、正しいことは正しいと言える・思える人をたくさん育てたい』と思っています。それがライフテーマですね。
― お逢いする度に、田嶋さんのそのお考えを強く感じます。そこに田嶋さんの本質があったんですね。
ありがとうございます。
母がとても苦労して私を育ててくれたので、経済的な自立をして子育てしていくことが大切だと思っています。女性や若い人たちなどディスアドバンテージの人達が経済的な自立ができるような活動をする事に対しては、すごく応援したいし自分もそうでありたいと思っています。
― なるほど、女性や若い方への大きな支援は、この志から来ているんですね。

社員教育で大切にしている事

― 田嶋さんとお逢いするといつも元気をいただけると感じています。
また、社員や大手企業の方も、田嶋さんのことをすごく慕ってらっしゃるのが伝わってきます。
ありがとうございます。
― 社員のモチベーションを高めるために心がけている事は
ございますか?
そうですね。信頼関係を築くためには軸がぶれない事
嘘をつかない・背伸びしすぎない事ですかね。

『できないことはできないという。できることは全力でやる』という事。その姿を見せるというか…
私には先ほどお話した志があるので、うちの社員は全員「人間として正しい事」ができると思います。
例えば、うちの利益が少し減ってしまっても、クライアントのためだったら相手のためになる事を言えるんです。仕事で一番よい関係はもちろんwin- winの関係になる事だと思っていますが、クライアントから言われた事が、もし人間的に曲がった事だったら“対決”してでも思いを伝えます。それが信頼関係を築くひとつになっていると思いますね。
安易にクライアントの意見をのんでしまったら、軸がぶれてしまいますから。
―田嶋さんは「正しい事を正しい」と今まで何十年もずっと思ってきたから言えると思うのですが、大人の顔色を伺ってきた人達、例えば新人社員にそういう人がいたら、どうやってそれを言えるように指導なさいますか?
確かに今の社員は優しいだけに困難があると負けたり・逃げたりしちゃうんです。そんな時、私は…逃がしません!!(笑)。
逃がさず、私の考えをしっかりと伝えますね。
そこから、愛情を感じ取ってくれる社員もいますし、辞めてしまう社員もいます。指導方法の正解はわかりませんが、私にはこの方法しかできないので、継続しています。このように、軸をぶれないようにするのが大事だと思っています。



     ▲会議の様子
また、社員のモチベーションを高めるためには、クライアントに認めてもらったり、店舗のお客さまに喜ばれるのが一つのゴールだと思っています。『成功体験をさせる事』が、私なりのコミュニケーションですね。

今回の震災により感じる事


社員とコミュニケーションをしていると、今回の震災の影響で、落ち込んでいく子が多いのを感じました。気持ちの優しい子ほど、東京にいるのに余震やメディアのあおりに不安になってしまう。
そんな社員達を、見ていると「何言っているの、被災地に比べたら安全地帯でしょ!被災地の人達が辛いときに何を甘えているの!」と叱咤激励をし、「経済が落ち込んでくるからこういう時に1円でも多く稼いでおかないといけないのよ。」と身を守るすべを伝えています。
それにより、今、社員は復興にむけてすごく盛り上がっています。
― 叱咤激励は出来ても、身を守るすべを伝える所までできるのが経営者として素晴しいですね。
見習います。
ありがとうございます。
私は、お父さん的な性格なんですね。災害も起こってしまった事はしょうがないんです。逆に、災害があると、
こんな事で負けちゃいけないと復興に燃えますね!
― 田嶋さんらしいお答えですね。 

ツールとルールとマインド

― お仕事をされていて一番辛かったこと・嬉しかったことはなんですか?
そうですね。嬉しいのはクライアントさんに評価されることですね。特に私自身ではなく、社員が評価された時が一番嬉しいです。辛かったことはあまり思い浮かばないですね。辛かったというよりは、ハードルとして “ベンチャーである”というのがありました。
例えば、女性が起業したというと、「女性の感性でやってきなさい」と言って応援してくれますが、経営の根幹部分になると女性が入れないようにしてしまう風習がありましたからね・・・。
― そうですね。お気持ちわかります。
逆に、女性起業家という枠が少ないので、“得”な部分もみています。起業家としてメディアや行政の委員としてお声かけ頂けるのは、女性起業家の数が少ないから優遇されているせいであり、実力以上の役割を与えて頂いてる気がしてます。

▲「スタッフが評価されることが嬉しい」と
答える田嶋さん
― 田嶋さんは本当に何でも前向きに考えられる方ですよね。起業した頃もそのようなお考え方だったんですか?
そうですね。まず、私は、成功者や大企業に何かしてもらおうとは思っていませんでした。小さな事でも何か相手に役立つようにと考えています。つまり、小さいながらもまずは自分が“give”することを提案することが重要だと思っていて、例えば、いいなぁと思う企業・社長さんがいたら、そこの社長がまだ気付いてないけど大切なこと、必要なことを調べておいて、喜んでもらうネタをリサーチ・準備しておくんです。
そのために大切にしている事は、そこのお店を知ること・企業を知る事・トップの考えを知る事です。お話した時の一瞬の会話でそれがヒッティングするとトントン拍子に話が進んで行く事が多いですね。
― 相手を納得させられる事を蓄えた状態にしておくんですね。
そう、そのためにしっかり準備をしておくんです。勝てる勝負の時にやらないとね。たとえ商談がうまくいかなくても理由がはっきりわかるのでスッキリします。ダメだった理由は自分に実力がなかったと捉え、他になにがあるだろうと分析しながら何度もトライしてきました。
なぜダメだったのかを細かく分析するので、次第に、商談成功率が高くなりましたね。
― 事後の分析をするかしないかで仕事の成長度合いは大きく違いますよね。
ダメだったときの分析ほど重要です!うまくいった時はたまたまという事が結構ありますから。でもダメだったときには必ず“必然”があります。
― 今のお言葉、とても心に響きました。
ダメだった事を無くして改善していかないと自分の成長はないですよね。
このような事は社員に始終いっています。そこはみんなわかってくれていますね。分析をしっかりやるからこそ、われわれが思っている事をクライアントが理解できなかったときに素早く手を引き、次のチャンスに活かそうと考えることができます。
なので、分析力がすべてにかかっているといえますね。分析をしていれば、螺旋階段のように上昇志向で上がることができます。
― なるほど。行動は全力投球で行いますが、結果が出たときに“よかった”“悪かった”で終わってしまう事って多いと思うんですよね。その後の分析が重要なんですね。
本当に、分析をして見つめなおす時間がすごく必要だと思います。
― 仕事を極める上で大切にしている事はなんですか?
プロとして少なくともお金を頂戴するだけの仕事をする、プロ意識を持つというのを大事にしています。
― 田嶋さんご自身もそうですし、社員のみなさんもそうですね。
そこで大切なのがロジックとパッションと両方です!
社員にマネジメントを教えていくのに大切なのは、
“ツール”と“ルール”と“マインド”の三種の神器のバランス。
コンサルタント企業ですから、「最新の武器」と「最新のロジック」でツールとして戦える武器を準備しています。
例えば、最先端のクラウド型のシステム、iPad,iPhoneなどの武器をきちっと社内に定着させるようにしてます。
最強の“ツール”があっても、使う人によって差がでてしまってはいけないんです。だから“ツール”の使い方をカバー出来る“ルール”立てがないと店舗ビジネスがなりたたないんですよ。よくある間違いが、ある程度の事を教えたら、あとは自分で考えてやってみてというパターンです。このような間違いをしないためにも、どのような思考プロセスを踏まなければいけないかを、ちゃんと教えてあげなければいけないんです。もちろん子どもの教育と一緒で全部与えすぎてはいけません。
どのように思考するといいのかという思考プロセスを、教える方法を“ルール化”しないと軸がぶれてしまいます。 
では、最強の“ツール”とすごい“ルール”ができたらOKでしょうか、そうではありません。この2つを使おうという“マインド”がないと宝の持ち腐れになってしまいます。
それをなんのために使って、どんな目標を達成したいのか、自分たち・お客さんにとってどんな風に得をして、しかも楽しいのかを含めて全部考えます。最終的には一番重要なのは“マインド”だと思いますが、サービス産業の順番は“ツール”と“ルール”と“マインド”の順ですね。“マインド”から入ってしまうクライアントも結構います。
うちは“ツール”と“ルール”はっきりさせて、それを使い倒す“マインド”を調整していく方針です。
“ツール”・“ルール”の完成度を高めつつ、必ずその中に自分の“意思”がないと働かないシステムを入れるんです。

“マインド”をモチベーションとしていくものでなければいけないのですが、その “マインド”調節するためのキーワードはチームワーク!です。
だからチームの力を認めてもらえるのが嬉いんです。

企業として広がっていくためには、1人が戦って引っ張っていくんではないです。田嶋さんがいるから頼んだでは企業として広がらないですからね。
店舗ビジネスでは、スタッフに「今日の売り上げ、昨日よりも上げたいです。」と全員に言わせると売り上げが上がるんです。スタッフ全員にどうやって、数字を意識させるのかが大切で、これが“ツール”ですね。
営業成績の数値が語っていることを店舗の社員に教えむ事が売り上げを上げるためには大切です。そのためには、すごく分析しています。
カッコイイ分析結果だけクライアントに渡しているけれど、実は水面下ではバタバタ必死になって分析しています
よ(笑)。それを見せないで、かっこいい所だけを見せるのがプロですよね。
カッコイイところが見つからなければ、見つけるまで探すという執念が私にはあります!
― 芯が通っていますね。
そうですね、軸はぶれてないですね。

人生の中であと何食たべられるのかを考えると、一食一食大切に食べて行きたい…

― 田嶋さんのお仕事を支える食生活。気をつけている事はございますか?
食事はとても気をつかって安全・安心な食事を心がけています。
大人になってから「人生の中であと何食食べられると思う?」という母の言葉の重みに気づいたのですが、そう考えると一食一食大切に食べていきたいと思うようになりました。
― 美味しいものを食べると心がホッとする、あったかくなりますよね。
食事もマッサージも元気なときはみんなでワイワイしてればより元気になるし、1人落ち着いていたり、疲れている時はホッとして癒されたりする、その料理と空間を提供したいと思っています。
― 運動は何かやってらっしゃいますか? 
もともとスポーツ好きなんです!ダンスとかクラッシックバレエ
とか若いころは夢中でレッスンもしてました(笑)。
他にはゴルフやスキューバダイビングなども行います。

▲田嶋さんのお店では旬の食材を
使った料理を提供。
― 今度、一緒にゴルフに行きたいですね。
いいですね!あんまりスコアに自信ないですけど(笑)。
― 私もです(笑)。
一番経験があって一番好きなのはダンスですね。 ジャズダンスで表現するのが特に大好きです。

本質を見極める世の中にしたい

―田嶋さんの今後の夢は何ですか?
本質を見極められる世の中を作ること、死ぬまでかかってもできないけど、死ぬまでやっていきたいと思えること
ですね。死ぬときに「あ~面白かった。」といって死んで行きたいです。
― 壮大な夢に向かって気負うのではなく、楽しんで取り組んでらっしゃるのが、今の言葉で伝わってきました。さすが田嶋さんですね。
最後にもう一つ聴かせてください。お仕事のアイデアがどんどんわいてくるのはなぜですか?
それは「なぜなぜ少女」だったからです(笑)。
私が浮気調査をしたらすごいと思いますよ(笑)。嫉妬心じゃなくてリサーチ力、分析できるという事は情報収集力でもありますよね。だけど、自分が興味を持っていないものは苦手ですね。知識ではカバーできるけど…
だから私にとって“車”と“子ども”はすごい弱点。そんな時は車関係に強い社員とタッグを組んでやり方を組み合わせていきます。弱点であっても、一生懸命やるケタ、パワーが通常とは違うので、クライアントからは“執念”なんていわれて言われます(笑)!
― 今のお話を聴いて元気になりました。弱点があっても仲間と共に一生懸命取り組めばクリアできるんですね。
 前向きな方といると、とてもパワーをもらえます。そして自分もパワーを与えられる人でありたいと思います。
そう、子どもたち若い人たちにパワーをたくさん与えてあげたい。

▲個性的な会社の年賀状
その人達が笑顔になると、こちらが元気がもらえますよね。社員はみんな私の子どものようなものです!
― この対談記事でみんなも頑張ろうと元気になってくれると思います。
今日は本当にありがとうございました。

≪田嶋さんが関わってらっしゃるお店≫

☆「晴レノ空ノ下」品川港南口店
☆「アロハテーブル」学芸大学店
☆「ラ・ベルデ」天王洲店
「玄品ふぐ 五反田の関」
☆「和風癒処」新宿西店 麻布十番店  中野店 目黒店  

編集後記

2003年に知人の紹介でお逢いしてから早8年。お仕事で何度かご一緒させて頂いたのですが、その度に、
頭の回転が早く、話の意図をすぐに見つけて的確なアドバイスをしてくださるステキな女性だなぁ…
と思っていました。
今回のお話でも、芯が通っていること、たゆまぬ日々の努力、最新の情報や技術(ツール・ルール・マインド)の重要性など…、ステキな言葉のシャワーを浴びさせて頂きました。
一方で、とってもユーモアがあったり、気配りができる点も魅力の田嶋さん。「アネゴ、どこまでもついていきます!」と言いたいぐらい、尊敬できるし、ステキな女性です。
これからもいろんな面でご指導いただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!    
                                                 ☆こばた てるみ☆
 
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