対談/vol.4

しょくスポ対談

vol.4 園田 正世 さん

vol.4のゲストは、大人気の“スリング”や、“おんぶひも”を取り扱う、北極しろくま堂代表の園田正世さんです。バイタリティー溢れ、そしてとても真っ直ぐな園田さん。彼女の人柄は、『しろくま』そのもの!そんな園田さんに、仕事のことや家族のこと、食のことについて、たっぷりお伺いしました!是非ご覧ください。

園田 正世(そのだ まさよ)


北極しろくま堂有限会社 代表取締役
伝統的なおんぶ紐を、育児体験から改善し独自事業を展開。2000年創業、05年事務所設立し、同年東京自由が丘、また07年2月17日に神戸トアロードに直営店をオープン。現在従業員12人を統括。


北極しろくま堂HP

※プロフィールは対談公開時(2007年2月22日)の
  ものとなります。

口コミの元は助産師さん

-まず最初に、北極しろくま堂を立ち上げたきっかけを教えてください。
1子を生んだ後、育児サークルを立ち上げました。その中で私はお産情報を担当したんですね。そしてある時、そのサークルの関係でお産のイベントに出かけたんですけど、その時初めてスリングに出逢ったんです。その時、ちょうど私は第2子を妊娠中だったんで、「生まれたら使ってみよう!」と思って購入したんですが、実際使ってみたらすごく良かったんで、「これをいろんな人に教えてあげよう!」と思い立ったのがきっかけ。それでしろくま堂という名前で販売を始めました。
-最初からネットで販売し始めたのですか?
いや、売り始めたのは2000年の12月だったんですけど、その時は15個ぐらいをアメリカから取り寄せて、そしてスリングのチラシを作って助産師さん経由で販売していたんです
-助産師さん!?
ええ、助産師さんのことはサークル活動を通じて知っていて、1ヶ月児訪問とかに行くと、育児不安が強いお母さんから、抱っこしないと泣きやんでくれない赤ちゃんで困っているとか、けんしょう炎になっちゃったとか、いろんな相談受けていたらしいんです。そこで助産師さんが、「園田さんっていう人がスリングって言うものを…」ってお母さん達に勧めてくれて…。いきなり個人名ですごい怪しいよね(笑)。
-では、助産師さんが営業マンだったんですね!?
取材を受けた記事に、サークル内で売り始めてとかよく書かれるんだけど、サークルでは一切そういうことはしない、というのが私の心情なんです。
だからまったく関係ない、初めて電話いただく、初めてお会いする方にスリングを紹介しながら、「もし欲しかったらどうぞ」というのが最初のやり方。だから最初のうちは月に2~3本ぐらいしか売れなかったかな。
-ところで、スリングって最近日本に入ってきたものじゃないんですか?
いや、21世紀になる前に、もうすでにスリングは日本に入ってきていて。最近になって日本に入ってきたってよく書かれるけど、本当はそうじゃない。95年とか、そのぐらいには普通に使っている人もいたんです。でも本当にコアな、母乳育児を推進しているラ・レーチェ・リーグっていうグループの会員の人しか使っていなかったんです。だからすごい珍しかったと思う。でもお産のイベントに行くと何人かいるんですよ。民族衣装みたいな柄のスリングを使った人が。くたくたになるまで使っている人もいたな。
-じゃあ、園田さんが初めて購入したのはそういう人たちから?それとも海外から輸入して購入したって形ですか?
ラ・レーチェ・リーグのブースで買いました。              
では、その時からネットをやっていたってことですよね?
ううん、その頃はまだ海外のスリングメーカーもネット販売はやっていなかったんですよ。だからカタログって、紙のカタログにただ注文する欄があって。それで申し込んだんです。
たぶん海外のサイトでネット販売が始まったのも、うちと同じくらい2001年頃だと思う。
-そうなんだぁ!すごいですね!
そうそう、『北極しろくま堂』の名前の由来を教えて頂けませんか?
しろくまって、家族愛がすごく強いんです。しかもしろくまはお母さんの母乳で育てているというのもあって。私もともと“スリングを販売する”っていうことと一緒に、“公正な育児情報を知らせてあげたい”っていう気持ちが同じ位あったんですよね。
―それにしてもこの名前、商品コンセプトにすごくぴったりですよね。
そうでしょ!でも他にも候補があったんですよ。『天才しろくま社』とか(笑)、ホワイトベアとか・・・
―いくつか候補があった中で「北極しろくま堂」にしたんですね。
さすがに『天才』がつくのもな…と思って。

良いものを、多くの人に伝えるために

-でも最初は紙カタログで購入されて、口づてで販売していたものを、ネットで販売しようと思ったのはどうしてなんですか?
お母さん達の育児に対する気持ちや感想は、それまで何百人のお母さんとサークルを通して会っていたから分かっていたんだけど、実はスリングを使った時の感想って私自身の感想しか知らなかったの。「スリングは良い」っていう自分の感想だけ。それでね、それぞれの家庭に行って使い方を説明して実際に赤ちゃんを抱っこしてもらうと、私が感動した時と同じような感想を皆さん言うんですよ。「こんなに軽いんだ!」とか「赤ちゃんて抱っこしなくても泣かないんだ!」とか。それを聞いて、私が感じたこの感動はどのお母さんにもある、普遍的な感想なのかもしれないって思ったの。だからこんなに良いものは、今、日本中でアパートの1室で悩んでいるお母さん達に教えてあげなきゃ!って思って。
-ええ。
でも教えたくても、妊娠中に母子手帳と一緒にもらう通販のカタログとかあるよね(笑)。そういうのにはとても載せられない。雑誌にも載せるお金もないし、そうするとだんだんインターネットっていう方向に転換し始めたの。お金もかからないし一番いいかな、と。
-なるほど。それで具体的にはどのような形でネット販売に結びつけていったんですか?
スリングを売り出したのは2000年12月。そして2001年6月にはインターネットのスクールに通いました。スクールって言っても2日間だけだけど。2日間でサイト構築のソフトを使えるよう教えてもらって。それで10月にネット販売をスタートしました。
-たった4ヶ月で!?すごい!
でも4ヶ月もかかってるよ!
-でもそれはすごい!!
その時はページ数も少なかったしね。

-パソコンの操作を覚えるのは大変じゃなかったですか?私はパソコンは必要最小限度しか使いたくないんですよね。
うーん…。いろんなサイトを見るネットサーフィンはすごく疲れるし今でも嫌い。でもサイトを作るのは“ものづくり”と一緒だからそんなに拒否反応は無かったかな。

判断力が速い秘訣

-園田さんの話を聞くと、『判断力』と『行動力』が素晴らしい!といつも思うんだけど。特に『判断力』がすごく早いですよね?
―もちろんお金を使うことは慎重になるよ。でも例えば男の人が会社を始めるときって、何百万も用意してそこから始めよう!となるけど、女の人…女の人って一括りにしちゃいけないけど、私の場合は「今あるお金で出来るかな」って部分でしか考えない。そうすると、失敗しても元に戻るだけって思うんですよ。傍から見ればそれがしろくま堂の会社の規模と同じようにどんどん額が大きくなっているから、「いきなり300万のこと考えちゃったわけ?」って思われるかもしれないけど。でも「これ、もしダメになっても会社潰れないよね?」というところしか手は出さない。もしかしてもともとギャンブル好きとか宝くじ買うのが趣味な人だったら別の考えかも知れないけど(笑)。

-なるほど!そこが判断基準なんですね。
あとは元々のコンセプト、『お母さんと赤ちゃんのため』っていう。頭がよくなるとか発育がよくなるとかじゃなくて、“本来人間的に育ったであろう形が実現できるもの”っていうのがコンセプトなので。だからそこから外れないものであって、外れない額であって、そういうとこだったら素早く判断するかな。
-結局自分の中にぶれない“ものさし”を持っていればスピードが速くなるんですね。
うーん、そうかな。
-あとは園田さんはネットワークが広いですよね。よく話していると、“どこどこの誰々さん”をたくさん知ってるじゃないですか。
それは静岡が地元だからじゃない?地元だからって言っても、高校卒業して静岡に戻ってきて20年か。でもその後のネットワークはありますね。

食へのこだわり

-今、社長として仕事の時間をすごくとられてしまうと思うんですけど、そんな状況でも子育てを大事にされてますよね。子育てや食に関する考え、子育ての芯のようなものがありますか?
ギリギリの芯なんだけど…(笑)。ジャンクフードはなるべく食べさせたくない。スナック菓子も含めて。少なくとも最低ライン自分の家にそれは持ち込まないな。もちろん食べたい時もあるでしょうし、外出してハンバーガーショップでどうしても食べたいと言ったらそれはアリだけど、自分でも作れる出来合いのものは買ってこない。どうせ買うなら自分で作れない出来合いのものを買う(笑)。買い食いとか立ち食いっていうのも嫌なんです。
-園田さんは学生の頃、競泳の選手だったんですよね。その頃は1年でも選手としてながく活躍できるように、1秒でも早く記録が縮まるように、普段の生活スタイルだったり、トレーニングは勿論、食生活を考えていましたか?
20年前ですからね…そのころスポーツ栄養は無かったような気がする。試合前にレモンのはちみつ漬けを食べるとか。当時寮だったんですけど、そこまで考えた食事じゃなかったと思います。食生活については何にもスポーツ選手として威張れることは無いですね。今はスポーツ選手じゃないけど、子どもと同じように自分もジャンクなものを食べない。それ食べるんだったら1食抜いた方がいいって思うんです。年齢重ねていくと、死ぬまでにあと何回かしか食べられないじゃないですか。そう思うと、変なもの食べるのが悔しい。1回分損した気がして。
-心の中も満足したいですもんね。

究極の目的のために

-食だけではなく、子育てに対して大事にしていることってありますか?同じ母親としてすごく興味があります。例えば、育児書を読んだりすると“待つことが大事”って書いてありますが、自分でやったほうが楽だし早いことも多い中で、自分に余裕がなくなってくるとそういう風には出来ないことないですか?
出来ないですねぇ。本屋でも平積みにされている「子どもへのまなざし」という小児精神科医の佐々木正美先生が書いた本があるんですけど、私その本にすごく感動したんです。子どもを見守ることをしてきたつもりなんですけど…。でも子どもってケースバイケースというか、一人一人同じようにやってきたつもりでも、子どもの個性でかなり味付けが変わってくる場合があるので、何をコアにしていいのか…。でも子どもを信じることしかないと思うんです。子育ては仕事以上に難しいですよ。仕事はお金を払えばある程度のこと出来ちゃうけど、子どもの場合はそうじゃないから。
-ホント、その部分ってすごく大変ですよね。同じように育てているつもりでも違いますし。受け方一つとっても、なかなか思うようにいかないですよね。
そうですね。でも思うようにしたいわけじゃないんですよ。私の究極の目的は、子どもがちゃんと独り立ちすること。だから子どもがちゃんと自分の足で生きていけるようにするのが役目だと思っているんです。だから学業ができるとかピアノが出来るとか、それはプラスアルファで良いと思うんですけど、生きてく知恵とかいろいろあるじゃないですか。人との付き合い方とか。そういうのを学んでほしいなとかいつも思います。
-その為にしていることってありますか?たとえば土日は家族みんなでどこかに行くよう心がけているとか。
土日はめったに仕事はしないです。普段忙しくしていますから、なるべく家族でいられるように。少なくとも土日に、子どもがお母さんと一緒にいたいと言ったら一緒にいられるようにします。
-大切ですよね。
あと、人によってそれが良くないって言うけど、私は説明するようにしているんですよ。さっきなぜ怒ったのか。なぜあの時嬉しいって思ったのかを。
-私自身は『頑張ることの大切さ』を子どもに分かってもらいたいと思っています。別に1番になってもらいたいとも思わないし、間違えてもいいんだけど、頑張っている姿はかっこいいじゃないですか。だから何かを始めたら、とにかく頑張って練習する。下手なら下手なりに頑張って練習することの大切さを伝えたいんです。
社会人になった時にこらえられないって言うのが、一番辛くて嫌な結果を招くんじゃないかなと思うんですよ。悪い環境の中にいることをこらえろって言うんじゃなくて、頑張らないのに言い訳をする人にはなってほしくないんですよ。だけど難しいんだよね・・・。

母としての姿、経営者としての姿

-超多忙な園田さんの一日のライフスタイルを教えてください。
6時30分に起きて、朝ごはんの支度をしたりします。子どもが全員いなくなるのが9時。それまでにお弁当作ったり。私にとって一番大切なのは朝ごはんなんです。かといって朝ごはんにいろいろおかずを作るわけではないんですけど。
-家族みんな揃って食事をしてらっしゃいますか?
夫は会社に行く時間が決まっているから、同じ時間に食べ始めるけど、子どもはそこにいたりいなかったり、かな。私もお弁当とか子どもの世話があるから座れたり座れなかったり。でも近くにはいます。あとお米には気を使っているかも。良いお米を使っているとかじゃないけど、分つき米。そこに雑穀を入れたり…。あと味噌とかにも気を使ってます。
-調味料とかごはんとか、そういうものは必ず毎食あるものじゃないですか。だからその部分を大事にされている方って本当に食を大切にされているなって思います。高級なステーキを買ってきたからいいんじゃないんですよね。
さて、話の続きを。9時に子どもが出かけてからそこから事務所に行かれるんですか?
そうですね9時半くらいかな?今はこれからできる神戸のお店の事でバタバタしています。それで途中に子どもを迎えに行ったり、あと小学生の子どもは事務所に帰ってきます。
-仕事は何時頃までされるんですか?
最近は6時くらいまでですね。そこから御飯作って、寝るのは9時半くらいかな。だから9時間寝ます。
-仕事はご自宅でしないんですか?
しない。家に仕事を持ち帰るって滅多にないです。
-園田さんは仕事の振り方がうまいですもんね、効率がいいんだと思います。それとアイデア、例えば新しい店舗のこととか、新商品について考えるお時間は仕事の業務時間内ですか?
経営者なんで、時間で切り売りしているわけじゃないですよね。だから気持ちの底辺の中に懸案事項があって、何を見ても「これに当てはまる」とかいつも考えています。土日も頭の中では考えています。こばたさんもそうですよね?
-そうですね。
それと同じです。いろんな赤ちゃんを街中で見ても、こういう抱っこひも使っているんだ、とか思うし。どこの国に行っても。それで気が休まらないのかな?
-そうかも知れませんね。それにしても園田さんて自然体ですよね。それといろんなアンテナがすごい立って、感受性が強いなぁ…と感心してます。
すごい鈍感ですよ(笑)
-いや、でもアンテナはすごい立ってますよ。
そうかなあ。でも発想は中学高校の時から変わっている、というか「よく面白いこと考えるよね」とか言われました

踏みにじらずに、進むこと

-園田さんが仕事を極める上で大切にされていることや、目標を達成するために努力されていることってなんですか?
踏みにじらないとか、そういうことだと思います。今はだんだんきれいごとでいられなくなった部分はあるけど、誰かを踏み台にしたり、何かを土台にして上にあがったら必ず自分に返ってくると思うんです。そういうことは人としてやってはいけないかな、と。でもビジネスの世界ではそうじゃないらしいんですね。『食うか食われるか』って言うし。いろんな専門家の先生にも「園田さんは相手に対して優しすぎる、甘すぎる」ってよく言われるんだけど、でも誰かを不幸にしてまでやっていいことってないと思うんですよ。最終的にはそこかな。  
-いろいろ大変なこともあると思うんですけど、その対処の仕方は?
すぐ忘れちゃう(笑) 。
-あはは!やっぱり園田さんて器が大きいですね。
太ったってこと(笑)?  



▲自由が丘店の様子
-いやいや(笑)

仕事に対しても、子どもに対しても、正々堂々と

-園田さんと何年間かお付き合いさせていただいていますけど、今日お話しを伺って、新たに「なるほど」って思った部分がありました。あとは、やっぱり芯がしっかりしていますよね。
でもスポーツだってそうじゃないですか。体についても芯がないとダメだし。芯がないと何事もうまくいかないと思います
-子育てに対してもそうですね。では最後に、園田さんの夢は?
老後の?   
-老後のちょっと手前かな(笑)。
うーん、やっぱり正々堂々としていられることかな?仕事に対しても、子どもに対しても、自分のことにしても。仕事だって他人に迷惑かけたら、もしかしたら静岡にいられなくなっちゃうかも知れないし。自分の子どもが他人様に何かしてしまったとしても同じ事だと思うんですよ。 あ、老後はグループホームに入ること(笑)
-じゃ、その夢に向かって頑張ってください(笑)。
  ただ夢は継続しなければいけませんよね…。
うん、継続するためにまじめに生きていかなきゃね!
-はいっ!今日はありがとうございました。
園田正世さんのお店、北極しろくま堂の直営2号店が、2007年2月17日に神戸トアロードにオープンしました!
詳しくは、北極しろくま堂HPで!  北極しろくま堂HP

編集後記

以前から交流して頂いているものの、今回のように腰を据えてお話を伺ったのは久しぶりだったので、園田さんの新たな一面も見聞きすることができました。それは園田さんが日々、進化してらっしゃる証拠ですね(^^)!それにしても園田さんは本当に「自然体」。肩に余計な力が入っていないので、いろんなことがスムーズに行えるんだと思います。これからもお互い仕事に育児に家事…と、いろんな時間を楽しみましょう!そして疲れた時は、一緒においしいものを食べて疲れなんか吹き飛ばしましょう!
こばたてるみ
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